【音響機材】ルームチューニングの難しさと、最近流行りの「自動音響補正」システムについて

スピーカーを買い替えました

仕事柄サウンドクリエイターやアーティストとの付き合いが多く、彼らと会って話す度に「新しい曲を書くためにドーピング的に機材を買ってしまう…。」という話題が出ます。
タイトなスケジュールや度重なるリテイクに耐え、リリース後もTwitterに謂れのないネガティヴな要素を書き込まれ…そんな彼らがモチベを保つためには、物言わぬアウトボードが必要なのかも知れません。
※諸説あります

私もそのうちの1人ですが、色々あって今回はスタジオの肝とも言えるモニタースピーカーをアップグレードしました。

モニタースピーカーの設置方法について

その前にひとつ、音響的な小話を聞いてください。

通常、施工が入るようなレコーディングスタジオ/マスタリングスタジオでは、防音/吸音を含めた音場調整が行われています。また、防音や吸音だけでなく、拡散と言って音を散らす目的の木製パネルを設置するところも多いでしょう。その後、精密なEQで細部に渡り測定&調整し、ようやく商用レベルのスタジオが完成します。端的に言えばカネが掛かってるってことです。

では、そうでない一般の人はどうしているのか?と言うと、大体は6畳くらいのスペース、天井は2m程度、そんな環境でDTMに興じる方が多いと思います。そこにはきっとドアもあれば窓もあり、押入れもあり、何なら部屋の形が四角形でない、というケースもあり得るでしょう。音響的には褒められたものではなく、少しでも音響に明るい人は吸音パネルなどをぺたぺたと貼っている人もいると思います。

例えばこういう吸音材。当方もかなりたくさん貼っています。しかし、この手のものは高域の吸音にはある程度の効果を発揮するのですが、低域には効果が殆ど及びません。私の場合は、効能より完全に「見た目のため」に貼っている感じです。スタジオ感出ますからね。

もっと本気でルームチューニングをしたい場合は、本気のアイテムを揃えるべきでしょう。
聴音パネルなどは眉唾に思う方も多いと思いますが、割と効果があります。安くて効果が大きいのはYAMAHAのACP-2。狭い部屋の場合は左右スピーカーの真ん中、広い場合は2枚用意して左右スピーカーごとに置くのが効果的です。これは1枚買っても良いかも知れません。

もちろん、天井にも工夫を施しましょう。壁とスピーカーの距離に気を遣う人は多いですが、案外床と天井からの反射(特に100Hz〜の低域)には無頓着な人が多いと思います。天井をブチ抜ける人以外は、なにか工夫すべきです。
余談ですが、海外アーティストのプライベートスタジオの音がなぜ良いかって、あれは「天井が半端なく高いから」です。いや、要因のひとつにしか過ぎないのですが、それでも高さは大きな影響を与えます。平気でBarefootやPMCが鎮座しており、かつそれがそれなりに鳴らし切れる、ってうのは日本ではなかなか見掛けません。

本当は拡散パネルなどを配置したいところですが、落ちてきたら危ないので、サーモウール辺りにしておくと良いと思います。一般的な家屋であれば、畳に刺す用の長い画鋲で止まります。

また、狭い部屋の場合はスピーカーを壁の近くに置かざるを得ない場合も多いですが、性質上壁に近づけば近づくほど低域が増しますので、本来は30cm以上離すのが推奨です。これは完全に部屋の広さに依存しますが、壁から離すと逆側の壁に近づき、反射音が大きくなるという諸刃の剣でもあります。

…ところで、これらのこと、全て出来ますか?
「お金と時間を掛けてリスニング環境を作っていく」ということが、です。

私は今環境(自室)ではリタイアしました。

Genelec GLM機能の導入

というわけで、スタジオ用のモニタースピーカーをGenelec 8240Aに変更しました。聞き慣れない型番ですが、定番Genelec 8040と同サイズで、GLM機能(音響補正プラグイン)が搭載されたモデルです。GLMとは、スピーカーから特殊な信号を再生し、それを付属のマイクで収音することで部屋の余計な反響音を検知し、それをソフトウェア上でカットする機能のことです。
以前とあるMAスタジオで聴いたGenelec 8050BPMのサウンドがかなり良く、以来Genelecもサイズが大きい機種はアリだなと思っていましたが、出物があったので実験がてらに購入しました。


システムとしてはこのようなイメージ(代理店オタリテックより引用)

DSPを信用するか否かはさて置いて、とりあえずの結果は良好です(ちなみに、以前の私はアンチDSPでした。最終出力段のお前がEQ処理してて良いの!?みたいな。今は音がよければなにも思いません。)。
思っていたよりデカかった問題以外は、当面使っていけそうな雰囲気を感じます。

どんなスピーカーでも音響補正出来るアイテムもある

というわけで、スピーカーを買い換えることで「ルームチューニング」という概念から逃げようとした私ですが、一定の効果を得ることが出来ました。ただ、ここ最近ではスピーカーを買い換えずとも「音響補正プラグイン」自体が単体で発売されています。
以前はIK MultimediaのARCというものもありましたが、最近だと間違いなくSonarworksが最もコスパの良い補正プラグインでしょう(もともと競合商品が少ないジャンルではありますが)。


Sonarworks > http://www.minet.jp/brand/sonarworks/top/

これがかなりすごくて、不要な低域のカットをするだけで相当スッキリします。
ヘッドホンの補正もあって、極端に言えば環境が変わることによるモニター音の変化をなくすことが出来るという代物。ここまで読んで来て「ルームチューニングしなきゃ!いやでも大変だし…どうすれば!」という想いを抱いた方、今更ですが写真は全部Amazonアソシエイトに飛ぶ(※)ようになっているので、是非導入してください。
※Wordpressの場合「メディアを追加→画像のアップロード(待ち時間)→貼り付け」の3行程ありますが、Amazonの場合は検索してすぐ貼れるので楽なことに気付きました

機材を買い換えるとモチベーション上がりますよね。そのためだけに色々買ってしまいます。
というわけで、今日はこれからミックス頑張ります。

One comment

  1. こんにちは
    アマチュアですがSonarWorks入れました
    (サブウーファ込で)

    低域とか笑えるくらいにスッキリ
    SonarWorksが考えた理想環境に近づけるっていうコンセプトですが、部屋を弄るのも面倒という場合にも良いなと思っています
    …俺か(笑)

    IKも2.5になって安く?なりましたがSystemWideないから利便性 悪いし、SonarWorksに関して言えば、minetからあれだけ買って、ソフトはAudioDeluxのSaleとかで買うのがお得かなと
    最近の価格設定は判りませんが

    お邪魔しました

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